ガムシロップ



 体中が熱くて仕方が無かったのは、熱い太陽に体を晒していたせいだけじゃ無く、君を思い出していたからだ。僕は学校の仲間に森で休んでくると嘘を言って足早に森へと駆け込んで行った。仲間の姿が見えなくなってもさらに僕は森の奥へと進んで行った。少しぐらい時間が経った所で仲間が探しに来ても困るからだ。

 森の中は照り付ける太陽の下よりは涼しかったかも知れないが、僕にはそれは全く感じられず、かえって草にぬかるむ足の感触やその音が僕の興奮の度合いを高め、奥へ行くほど強くなる湿気やそれに混じる草木の匂いが体に染み込んでいって、すでに汗でまとわりついていたワイシャツを更に濡らしていった。

 決めた場所にはかすかに日が差し込んでいて、これからの僕の行為を映し出していた。しかし僕は誰かに見られさえしなければ、そんなことは気にも留めなかった。さっきから頭の中は君の事でいっぱいで、適当な場所が見つかると僕は行為に熱中し始めた。

 僕は木にもたれ掛かり体を楽にした。目を閉じて君の顔を思い出し、そして頭の中で君の名前を呼んでみる。鼓動が更に高まるのを感じる。その瞬間体中の血が駆け巡り更に体が熱くなった。僕は足で体を支える事が出来なくなり隣にある木に手をかけてしまった。

 手に感じるぬるりとした感触に僕は薄目を開けて、それが何かを確認した。木の樹液だ。下の木の色を映し出して琥珀色のように見えるその樹液だったが、それを手に取り指で静かに引き伸ばしてみると半透明の白みがかった樹液だった。周りの暑さを受けてかその樹液は生ぬるく、僕はその樹液を引き伸ばす行為に更に興奮してしまった。

 その樹液の伝ってくる部分を見てみると、木の表面に小さな割れ目が出来ていた。その割れ目からは僕が拭き取った樹液を補充するかのように、白濁色の樹液が流れ出ていた。僕はそこへ手を伸ばそうとしたが、樹液を弄んでいた最中も続けられていた行為に僕の体は限界に来ていた。

 僕は体を起こし、樹液が滴る木に肩を付け前のめりになってその木に体を預けた。目を閉じ再び君の顔を思い出し、さっきは頭の中で呼んでいた君の名前が今度は口から洩れるのを自分の耳で確認した。君の名前を口にした瞬間目の前が白くなり君の顔も吹き飛んだ。

 もたれ掛かった木の生ぬるい樹液を頬に感じながら、行為の終末を確認する。まるでガムシロップが牛乳に溶け込んでいくように、それは木の下に落ちた樹液と交じり合っていた。僕の体から汗が引き始めた頃、行為の終末を見届けたかの様に太陽に雲が差し込み、僕の体は森と同化していた。





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