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同化 私の前世は「サカナ」では無かったかと思うほど、私は水に浸かるのが好きだ。その水が澄んでいようが澱んでいようが、それが水でさえあれば私は嬉々としてその水に体を沈めてしまう。 水に体を沈め、肌でその感触を味わい、時に冷たくときに熱いその水の温度を感じ、ゆれる水面に光る月や星や太陽や雲の動きを楽しむ。そしてその水独特の匂いを肺の中に封じ込め、ずるずると頭を水の中に入れていく。 肺に入ったその水独特の匂いは、私の血管の中へと放り込まれ全身を駆け巡る。地上で吸い続けた酸素の代わりに、私の体の隅々までその匂いは行き渡るのだ。その匂いは私の体の細胞に取り込まれ遺伝子レベルで同化を始める。 手足が痺れるのを感じだし、ゆるやかに意識が遠のいていく。私の耳には遠のく意識とは正反対に激しく動き続ける私の心臓の音と、それに共鳴する静かな水の音が聞こえるだけだ。 私は水とその匂いに同化することを望んで水の中へ体を沈めるのであろう。あるいは吸い続けた酸素に犯された細胞を浄化する為に。しかし水は私の死体をそこへ浮かべる事を良しとしないのであろう。私の意識が完全に無くなり、手足の痺れさえも感じなくなった時に私の体に浮力を与え水面に浮上させる。そしてまた酸素を吸いだすのだ。 私は頭だけを水面に出し、体は水中に残したまま手足の痺れを余韻として楽しむ。その痺れは水の匂いに浄化されている証拠だ。やがて痺れの取れた体を水の中から持ち上げる。私は皮膚についた水滴を拭おうとしない。その方が水の匂いが残ったままになる。私はそのまま服を着て濡れた体で家に帰るのだ。 |