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本望 肉体は各々個人の物で、骨、肉、血、神経、その全てはこの世に産まれて来た瞬間から、その個人の持ち物だと思う。だけど、誰か自分以外の人間に自分の言葉、思考、行動、その全てを見えない何かに変えてそっと相手の体に流し込み、細胞レベルで自分自身が相手の中に存在するのだということを感じさせる事が出来たら。 喋っている時に、「これはあの人の言葉だ」と気が付いたり、話を聞いている最中にもしくは終わって考え直している時に、内容の判断レベルにその人の思考が出てきていたり、誰かと触れ合ってる最中に、違う肌の感触や声を探していたり。 しかもその事実に全く気が付かずまるで自分の肉体や精神のように、相手のそれが体中に溶け込んでいて、何かの拍子にその存在を感じさせる事が出来たら。体を埋め尽くしてると思わせる事が出来たら。 それが本望だと思って私は今まで人を愛してきた。それは「慣れ」や「時間」というもので形成されていく物ではなくて、互いが常にそう望む事、望み続ける事によって形成されていくものだと信じて。そして私はこれからもそうやって人を愛していくだろう。 自らの新陳代謝では再生する事の出来ない私とという細胞を、古くなれば交換し、必要があればどこかに集中させ傷を治し、そしてそれがあたかも極自然の事のように何処までもその人らしく居てもらう。 それが私が生きていくための最低条件であり、何にも負けない心を生み出す場所。私は自分が生きる為にその細胞を交換し続ける。言葉で、時にはその肉体を借りて。私にはその時間さえ与えてくれればいいと思う。 |