私は機械じゃ無いから



 前に車屋のオヤジが言ってたんだけど、「車っていうのはオイルと燃料さえ入っていれば、ちゃんと走るもんなんだよ。」って。そしてこんな事も言ってた。「エンジンとかの機械って壊れる前が最高に調子良くて、壊れる時は一瞬だ。」って。


 あなたの為に走り続けてきた私はもうガス欠寸前だった。体中のオイルもどす黒く濁ってしまって心も体もどこもかしこもまともに機能しなくなりかけていた。私は機械じゃ無いけど、燃料もオイルも無けりゃ走り続けて行く事は出来ない。そして機械じゃ無いから、今ここで壊れるわけにも行かない。

 あなたは当たり前だと思っているかも知れないけれど、私は今もこうして走り続けている。つまりはあなたじゃない他の誰かの手によって燃料を補給し、オイルを入替え、走り続けていく術を私は覚え、手に入れたのだ。そしてその事にあなたは気がついていない。

 前に何気にあなたとそんな車の話をしたのを思い出していた。話をした時は当然何も意識はしてなかったけど。今思い出してみると車の話が自分の例え話のようになるなんて。でも、車の話と違うのは私はちゃんと走っていくし、私自身は決して壊れたりしないという事。

 壊れるのはあなたとの関係であって私自身じゃない。だって、私は機械じゃ無いから。





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